長らく本会で活躍された川村功理事が2012年(平成24年)5月10日、ご逝去されました(享年69歳)。
川村先生は、日本では肥満外科治療が認識されていない時代に、積極的に肥満外科手術に着手され、その治療法確立と普及のため一生を捧げられました。振り返りますと、先生は、1968年千葉大学医学部御卒業後、同第2外科講座に入局し、外科医として研鑽され、1980〜1982年米国ハーバード大学外科New England Deaconess Hospitalに留学された際、そこで肥満外科手術の重要性を目の当たりにし、術式を学び、帰国後、高度肥満に対し肥満外科手術を始められました。その後、職務として1990年千葉大学第2外科助教授、同年栃木県厚生連 石橋総合病院院長、1995年から2008年まで栃木県厚生連 下都賀総合病院院長、2008年4月より医療法人社団木下会 鎌ヶ谷総合病院 名誉院長、2010年東邦大学医療センター客員教授を務められました。
肥満外科治療に関しては、絶えず研鑽に努められ、有効性と安全性を検証しつつ、日本の肥満治療学領域でその有用性を訴えつづけ、日本肥満学会でも外科部門で活躍されました。さらに、チーム医療の重要性から内科医も参加した肥満治療研究会(現、日本肥満症治療学会の前身)を立ち上げられ、2009年には「日本肥満症治療学会」の設立の主要メンバーとして活躍され、理事(外科部会長)に就任されたのは記憶に新しいところです。
これらを通じ、わが国で多数の肥満外科医の育成に努められつつ、かつ、海外の肥満外科学会とのパイプ役も永年果たされ、「International Federation for the Surgery of Obesity」の日本部会代表、Asia Pacific Bariatric Surgery Society の理事を歴任されました。さらに、わが国で2011年開催されたアジア肥満外科学会の会長を務め、この分野の日本における重要性を広く訴えられました。
長い間、多数例の手術をしながら術中死は一例もないとのことでしたが、日々、「安全な手術などはない。安全に手術をするために万全をつくす」が口癖でした。
当学会員として、この足跡の物語る先生の思いを引き継ぎ、さらに発展させることが課せられた責務と考え、ここに心からのご冥福を祈ります。